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拝金」 堀江貴文 (著)
堀江貴文の小説デビュー作。自身が歩んできた道を少しずつ取り込み、そこに架空の人物を追加していく感じなので、非常に読みやすい。背景をいくらか知っているから、場面をそこまで想像しないでいい。というのにプラスして文体やそもそもの文量も多くないことなどから、買った日に読み終わってしまった。あちこちのレビューでも「スピード感があって一気に読んじゃいました」というのが目立つのはそういうことだろうと思う。堀江貴文という人やあの頃の一連の事件を知らずにこの本を「1冊の小説」として手に取った場合の感想で言うと対した事はない。それは当然で初めて書いた小説がそんな完成度高かったら、プロ小説家はどうすんだよ、てことだと思う。逆にデビュー作として考えたら、十分面白いと思う。本を読む習慣があまりなく、かつ堀江貴文に嫌悪感がない人は楽しめると思う。
読み終わって数日したときにApp Storeにアプリ版が出たのが、予想通りというか残念というか。電子書籍くらいがちょうどいいかもしれない。500円弱安いし。
[App Store] 拝金

クォンタム・ファミリーズ」 東浩紀 (著)
読み終わったのは今月だけど、6月分で。発売は昨年末。先日、新潮社の三島由紀夫賞を取った作品。著者のTweetみてると授賞式に関して一悶着あった感じだけど、まぁそもそもこの賞自体が知名度が低いし。文壇てそんなもんだろうと思ったのが本音。三島賞と山本周五郎賞で、直木賞・芥川賞に対抗しているわけだが、知名度の差があり過ぎ。受賞作が受賞後バカ売れするわけでもないし。大きな賞をとる作品は内容は一定レベル以上はともかく、プラスαの利権が絡んでいるように思ってる。なので、実はそこまで期待はしてなかった。(むしろ廃盤になる前にとりあえず買っておこう的な)
でも、面白かった。「1Q84」同様、最近多い並行世界ネタ。注意して読まないとどの世界か分からなくなりかねない。「1Q84」より専門的っぽい単語が多いし、ネット世界の流れをある程度知っていないとやはり抵抗があるかもしれない。家族の繋がりがテーマのベースにあるのだけど、その世界観を表現するために散りばめられた情報に興味がいった。個人的にはTwitterなんかでもおなじみのbot。botが増大した世界を想像するとやはりそれは情報の正確さに影響する。それを巧みに表現しているのが素晴しい。
が、小説としてみた場合。いくつか残念だな、と思う点があったのも確か。特に人物描写や人物そのもののキャラクター設定。そこがメインの小説なだけに少し損をしている。人の名前に難しい漢字を使っていない。読みも難しくない。だけど一般的でない。ゆえに読みにくく、流れを邪魔している。そういうところがいくつかある。
なんだけど、今のところ今年読んだ中で一番面白かった。

死神の精度」 伊坂幸太郎 (著)
伊坂幸太郎の代表作?と思っているんだけど、App Storeを徘徊していたらアプリになっていたから電子書籍も物は試し、買ってみた。Appで買うと、450円なので文庫の550円より100円安い。で、これが意外に読みやすいし、不都合な感じが全くなかった。あぁ、こうして紙媒体はなくなっていくんだな、と初めて感じたのがこれ。
作品はとても面白い。一気に読めるし、読んだあとにモヤモヤすることもない。明確に最後まで書ききって欲しいとか望んじゃう人はモヤっとするのかな?そんなに書ききっている小説なんて最近ないと思うけどね。伊坂幸太郎がここにきてトップ小説家に登りつつあるのはやっぱり確かかも。万人が抵抗なく読める、これが重要なんだと思う。東野しかり、宮部しかり。
まぁ、しかし紙媒体より電子書籍の方が物質的な存在感がないから、面白くなかったら読むのを止めてしまうんだろうな、というシビアな感じもある。直接過ぎて作家泣かせと感じる時代になったのかも。反面、自費出版の敷居は下がり、売れなくなった本が再び売れる、という利点もあるので、どっちもどっちかな。アメリカとは本を読む場所、時間が圧倒的に異なる日本で電子書籍がどうなるか、そこは注目。いずれにせよ、そこらへんはまた別の機会にまとめるとして、電子書籍デビューに最適なので未経験者は試してみたらどうかな。
[App Store] 死神の精度


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